はじめに:今、なぜラウンドワンに注目すべきなのか?
投資のポイント:ラウンドワンは米国展開の大成功により、ROE22.5%、ROA8.0%という驚異的な収益性を実現しています。売上の37%を米国事業が占めるまでに成長し、さらに1000億円を投じた200店舗展開計画を進める成長企業として、今まさに投資妙味が高まっています。
ラウンドワン(証券コード:4680)をご存知でしょうか。多くの方が「ああ、あのボウリング場ね」と思われるかもしれませんが、それは大きな誤解です。実際のところ、同社は日本発の複合エンターテインメント企業として、アメリカで想像を超える成功を収めている隠れた優良銘柄なのです。
直近の2025年3月期決算を見ると、その成長ぶりは目を見張るものがあります。売上高1,770億円(前年比11.2%増)、営業利益270億円(同11.6%増)という堅調な二桁成長を達成。なかでも注目すべきは米国事業の躍進で、いまや全体売上の37%を占めるまでに拡大しています。その結果、ROE22.5%、ROA8.0%という驚異的な高収益を実現しているのです。
今回は、ラウンドワンの本当の投資価値について深堀りしていきたいと思います。内容を、スライド形式で読みやすくまとめました。よかったらチェックしてみてください。
1. 投資判断:今が買い時か?
結論:「買い推奨」(目標株価:1,542円)
率直に申し上げます。現在株価1,247円に対し、目標株価1,542円(上昇余地約24%)での買い推奨です。その根拠をお話しします。
なぜ強気なのか まず何といっても、米国事業の爆発的成長です。売上構成比が37%まで拡大し、営業利益は100億円規模に達しています。ここまで海外で成功している日本のサービス業は珍しいと言わざるを得ません。
次に収益性の高さ。ROE22.5%、ROA8.0%という数字は、優良企業の中でもトップクラスです。これだけの高収益を安定的に出せている企業は、そうそうありません。
そして成長戦略の明確さ。1000億円という巨額投資で米国200店舗展開を計画していますが、これまでの実績を見る限り、実現可能性は十分にあると考えています。
一方で気をつけたいリスク もちろん、手放しで楽観視はできません。エンターテインメント業界は景気の影響を受けやすく、米国事業の比重が高まれば為替の影響も無視できません。また、日本国内市場の成熟化は避けられない課題です。
2. 企業概要:複合エンターテインメントの先駆者
実は革新的だったビジネスモデル
ラウンドワンの本当の凄さは、**「複合エンターテインメント施設」**という今では当たり前に見える概念を、実は日本で最初に確立したことにあります。従来、ボウリング場はボウリング場、ゲームセンターはゲームセンター、カラオケはカラオケと、それぞれ別々の専門店が当たり前でした。
ところが同社は「なぜバラバラなんだ?一箇所に集めれば便利じゃないか」という、今思えばシンプルな発想から革命を起こしたのです。
ラウンドワンの4本柱
- ボウリング:普通のレーンだけじゃつまらない。映像と音楽で盛り上がる「スクリーンレーン」や、初心者でも楽しめる「バンパーレーン」など、とにかく多彩
- アミューズメント:最新のクレーンゲームから音楽ゲームまで、常に新しい機械を導入
- カラオケ:個室から大きなステージまで、TPOに合わせて選べる
- スポッチャ:なんと50種類以上のスポーツが楽しめる、まさに「何でもあり」の空間
頭の良い資産運営
2014年からの店舗リース化も、実は相当に戦略的な判断でした。巨額の不動産投資を避けて身軽になり、その分を新規出店や設備更新に回せるようになったのです。これがROA向上の大きな要因でもあります。
「重い資産は持たずに、収益性重視で行こう」という方針転換が、結果的に大成功を収めています。
3. 財務分析:これほど稼げる会社があるとは
驚くべきROE・ROA水準
2025年3月期の主要指標
- ROE:22.5%(一般的な優良企業の目安は10-20%)
- ROA:8.0%(優良企業の目安は5%以上)
- 自己資本比率:33.7%(堅実なレベル)
ROE22.5%という数字には驚かされます。これは「株主が投資した1万円が1年で2,250円の利益を生んでいる」ということです。しかも一過性ではなく、継続的にこの水準を維持している点が注目すべきところです。
ROA8.0%も素晴らしい数字です。会社が持っている資産を使って、いかに効率よく利益を生み出しているかを示す指標ですが、5%を超えれば優良企業とされる中で、8.0%という水準は相当に高いと言えます。
劇的に変わった収益構造
売上構成比の変化(2019年→2025年)
- 国内事業:85% → 63%
- 米国事業:15% → 37%
この6年間で起きた変化を見ると、もはや「日本のボウリング場チェーン」ではなく、「グローバル・エンターテインメント企業」と呼ぶべき姿になっています。特に興味深いのは、米国事業の営業利益率が国内事業を上回っていることです。つまり、海外展開によって全体の収益性が押し上げられているのです。
安心できるキャッシュフロー
決算書を詳しく見ていくと、営業キャッシュフローが安定的にプラスを維持していることがわかります。「利益は出ているけど現金が入ってこない」という心配がない、健全な経営状態です。投資キャッシュフローも計画的で、フリーキャッシュフローは継続的にプラス。財務面での不安は感じられません。
4. 米国展開:なぜアメリカでこんなに受けているのか
想像以上のスピードで拡大中
2010年にロサンゼルスに1号店を出してから、わずか14年で54店舗。年平均で約4店舗のペースですから、かなり積極的な展開です。しかも、ただ出店しているだけではありません。
衰退するモールの救世主になった アメリカのショッピングモールは、ネット通販の普及で苦戦しているところが多いのですが、ラウンドワンはそこに目をつけました。「空いているテナントがあるなら、そこに入ろう」という発想です。
実際、コネティカット州のダンベリーフェアモールでは、ラウンドワンが入った後、モール全体の来客数が18%も増えたそうです。モールのオーナーからすれば、まさに救世主的な存在でしょう。
「ウィアブー」という新市場の発見
アメリカで特に人気なのが、日本のアニメやゲームのキャラクター商品が取れるクレーンゲームです。アメリカには「ウィアブー」と呼ばれる日本のポップカルチャー愛好者がたくさんいて、彼らにとってラウンドワンは「聖地」のような存在になっているようです。
「ここでしか手に入らない日本のグッズ」という価値を作り出したのは、非常に優れたマーケティングだと思います。
課金システムの妙
日本では100円玉をジャラジャラ入れるのが普通ですが、アメリカではクレジットカードで50ドル、100ドルとまとめてチャージする方式です。一度にまとまった金額をチャージしてもらえるので、客単価が上がりやすく、価格調整も柔軟にできます。
この仕組みの違いが、収益性の向上に大きく貢献していると考えられます。
5. 競合優位性:なぜ他社は真似できないのか
業界関係者も認める圧倒的な地位
実際に業界で働いている方々に話を聞くと、「この業界では最大手で、競合他社がいない」「総合レジャー施設としては他に競合もなく、唯一だと思う」という声をよく耳にします。
これだけ成功しているなら、他社も真似すればいいじゃないかと思うかもしれませんが、そう簡単にはいかない理由があります。
なぜ真似されないのか
まず、とにかくお金がかかること。大型の複合施設を一から作るには、数十億円規模の投資が必要です。しかも、「やってみたけどダメでした」では済まない金額ですから、二の足を踏む企業が多いのでしょう。
次に、運営ノウハウの複雑さ。ボウリング、ゲーム、カラオケ、スポーツと、全く異なる業態を一つの施設で回すのは、想像以上に難しいものです。それぞれの専門知識が必要な上、全体を統合的に管理する技術も求められます。
さらに、立地の希少性。郊外の大型モール内で、これだけの規模の区画を確保できる場所は限られています。ラウンドワンが先手を打って良い立地を押さえてしまったことで、後発組は厳しい状況に置かれています。
アメリカでも独自ポジション
よく比較されるデイブ&バスターズは、どちらかといえばスポーツバー的な色合いが強く、ターゲット層が異なります。ラウンドワンは日本のゲーム文化に特化した独自のポジションを確立しており、直接的な競合はほとんどいないのが現状です。
6. リスク分析:投資前に冷静に考えておきたいこと
やっぱり景気には敏感
エンターテインメント業界の宿命として、景気の影響を受けやすいという特性があります。不況になると、まず削られるのは娯楽費ですからね。特に米国事業の比重が高まっている中、向こうの経済状況にも左右されやすくなっています。
最近のアメリカのインフレ状況を見ていると、消費者の財布の紐が締まる可能性もあり、その点は注意が必要です。
為替の影響も無視できない
米国事業が売上の37%を占めるようになった今、為替変動の影響は以前より大きくなっています。円安なら増益要因、円高なら減益要因となりますが、最近の為替相場の変動幅を考えると、業績への影響も軽視できません。
ヘッジをどの程度かけているのか、決算説明会などで確認しておく必要があります。
国内市場の先細り懸念
これは避けて通れない現実ですが、日本の少子高齢化は確実に進んでいます。若者向けのエンターテインメントが主力である以上、国内市場の縮小は長期的な課題です。
米国展開の成功は心強いですが、それでも国内売上が6割を占める現状では、この問題とは向き合い続けなければなりません。
デジタルエンタメとの競争
スマホゲームやVRなど、デジタル系のエンターテインメントがどんどん進化している中、「わざわざ出かけて遊ぶ」という行動様式が廃れる可能性もゼロではありません。
ただし、コロナ禍を経て「リアルな体験」の価値が再認識されている面もあり、この点については楽観視しても良いかもしれません。
休日の多少で業績がブレる
これは意外に思われるかもしれませんが、祝日の配置によって四半期業績にはかなりのブレが生じます。ゴールデンウィークや年末年始の日程次第で、売上が大きく変わってしまうのです。
短期的な業績の上下に一喜一憂しないよう、この点は頭に入れておいた方が良いでしょう。
7. 今後の成長戦略:1000億円投資の行方
米国200店舗展開計画
現在54店舗の米国事業を、向こう数年で200店舗まで拡大する壮大な計画が進行中です。投資総額1000億円という規模は、同社の時価総額(約2,800億円)の3分の1に相当する大型投資です。
展開戦略のポイント
- 郊外モールへの集中出店:都心部から離れた人口密度の低い地域も含む
- クレーンゲーム強化:2025年7月末までに4,000台体制を構築
- フード事業拡充:「Round1 delicious」ブランドで日本食を展開
中国市場への参入
2021年に広州新塘イオンモール店をオープンし、中国市場への参入も開始。アジア圏での複合エンターテインメント需要の取り込みを図っています。
デジタル化・DX戦略
従来の実店舗型からデジタル技術を活用したハイブリッド型エンターテインメントへの進化も重要な戦略です。オンライン予約システム、デジタル会員制度の拡充により、顧客エンゲージメント向上を目指しています。
8. 投資家目線での総合評価
バリュエーションは妥当な水準
現在の投資指標(2025年6月時点)
- PER:13.9倍(決して高くない)
- PBR:3.56倍(成長性を考えれば許容範囲)
- 配当利回り:1.27%(物足りないが、成長投資重視なら理解できる)
PER13.9倍という水準は、これだけの成長性を考えると決して高くありません。「もう少し評価されても良いのでは?」と感じるくらいです。PBR3.56倍は一見高めに見えますが、ROE22.5%を維持できるなら妥当な水準でしょう。
配当利回り1.27%は確かに物足りませんが、今は成長投資に資金を回している段階と考えれば理解できます。
投資スタイル別の私見
成長投資派の方には:★★★★★ 米国事業の爆発的成長、明確な拡大戦略、ROE22.5%という高収益性。成長投資家が求める要素がすべて揃っています。
バリュー投資派の方には:★★★☆☆ PERは適正レベルですが、「掘り出し物」という感じではありません。ただし、成長性を考慮すれば割高感はないと思います。
配当重視派の方には:★★☆☆☆ 現在の配当利回りは低めですが、業績成長に伴う将来の増配期待はあります。今すぐ高配当を求める方には向かないかもしれません。
個人的なリスク・リターン評価
期待リターン:年率15-20%(3-5年スパン) これまでの成長軌道と今後の拡大計画を考えると、このくらいのリターンは期待できそうです。
リスクレベル:中程度 米国展開の成功により業績は安定化していますが、為替や景気変動のリスクは依然として存在します。
投資判断について
これだけの成長ストーリーと収益性を持つ企業が、まだそれほど注目されていないのは意外です。おそらく「ボウリング場」というイメージが先行して、その革新性や成長性が十分に理解されていないのかもしれません。
そういう意味では、今はまさに「隠れた優良銘柄」と言える段階にあると思います。
まとめ:ラウンドワン投資で押さえておきたいポイント
なぜ買い推奨するのか
改めて整理すると、ラウンドワンを推奨する理由は以下の通りです:
- 他に類を見ないビジネスモデル:複合エンターテインメントという独自ポジションを確立し、簡単には真似されない競合優位性を築いている
- 米国事業の目覚ましい成功:売上の37%を占めるまでに成長し、営業利益100億円規模の新たな収益の柱となっている
- 驚異的な収益性:ROE22.5%、ROA8.0%という数字は、優秀な企業の中でもトップクラスの水準
- スケールの大きな成長戦略:1000億円投資による200店舗展開という、本気度の高い拡大計画
- 財務面の安心感:自己資本比率33.7%、安定したキャッシュフローで、財務リスクは限定的
一方で注意しておきたいこと
投資に絶対はありません。以下の点には十分注意が必要です:
- 為替の影響:米国事業の比重拡大により、円高時には業績下押し要因となる
- 景気敏感性:エンターテインメント業界特有の変動リスクは依然として存在
- 国内市場の成熟化:少子高齢化による長期的な市場縮小懸念
- 巨額投資のリスク:1000億円という投資が計画通り進むかは不確実性がある
投資アドバイス
目標株価1,542円、現在株価1,247円からの上昇余地約24%
これだけの成長ストーリーを持つ企業としては、まだ十分に評価されていないと感じています。3-5年の中長期投資として、ポートフォリオの5-10%程度での組み入れをお勧めします。
決算発表の際は、特に以下の点をチェックしてください:
- 米国既存店の売上成長率
- 新規出店の進捗状況
- 為替ヘッジの方針
- 国内事業の動向
短期的な株価の上下に惑わされることなく、同社の成長ストーリーが着実に進んでいるかを見極めることが重要です。
最後に
ラウンドワンは、多くの投資家がまだ気づいていない「隠れた成長株」だと考えています。日本発のグローバル・エンターテインメント企業として、これからも驚きを与えてくれるのではないでしょうか。
ただし、投資は自己責任です。この分析はあくまで参考情報として活用していただき、最終的な投資判断はご自身で行ってください。市場環境の変化により、見解も変わる可能性があることも付け加えておきます。
免責事項:本記事は投資判断の参考情報として作成されており、特定の投資を推奨するものではありません。投資判断は必ずご自身の責任で行い、必要に応じて専門家にご相談ください。市況変化により分析内容や投資判断は変更される可能性があります。
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