日本の再生可能エネルギー市場が大きく成長する中、テスホールディングス(証券コード5074)という企業をご存知でしょうか。太陽光発電やバイオマス発電のEPC(設計・調達・施工)から、自社発電所の運営、さらには注目の蓄電池ビジネスまで手がける独自のビジネスモデルを持つ企業です。
この記事では、テスホールディングスの事業内容や財務状況、将来性について、アナリストの視点から詳しく解説していきます。株価が低迷している今だからこそ見えてくる投資機会や、中期経営計画「TX2030」の実現可能性、さらにはリスク要因まで、投資判断に必要な情報を網羅的にお届けします。
脱炭素社会への移行が加速する中、テスホールディングスは本当に「買い」なのか。この記事を読めば、同社の強みと課題が明確になり、投資判断の材料が得られるはずです。
テスホールディングスの独自ビジネスモデルとは
テスホールディングスは、エネルギー分野でワンストップソリューションを提供する企業です。事業は大きく2つのセグメントに分かれています。
まず「エンジニアリング事業」では、工場や事業所向けに省エネ設備や再生可能エネルギー設備のEPCを請け負います。具体的には、コージェネレーションシステム、太陽光発電システム、バイオマス発電設備、そして蓄電池システムなどです。特に蓄電池分野では、国内でも先行して大規模プロジェクトを獲得しており、2024年末時点で累計約367億円規模の受注実績を誇ります。
もう一つの柱が「エネルギーサプライ事業」です。自社で保有する太陽光発電所やバイオマス発電所から電力を販売するほか、顧客施設の敷地内で発電設備を運営するオンサイトPPA(電力購入契約)、発電所の保守管理サービス、電力小売、さらにはバイオマス燃料の供給まで手がけています。2025年6月期末時点で、自社発電容量は合計400MWを超えており、2025年4月には佐賀伊万里バイオマス発電所(出力75MW)が商業運転を開始しました。
このビジネスモデルの最大の特徴は「フロー収益+ストック収益」の組み合わせです。EPCで顧客基盤を拡大しながら、発電事業で長期安定キャッシュフローを得る好循環を狙っています。他社が発電所開発や設備工事など特定領域に特化する中、テスホールディングスは開発からEPC、ファイナンス組成、運用管理まで一貫して遂行できる点が大きな差別化ポイントです。
また、メーカー系列に属さない独立系企業であるため、ベンダーフリーで最適な機器やシステムを提案できることも顧客メリットとなっています。50年近いエネルギー設備施工の実績を背景に、産業用コージェネや省エネ改修での豊富なノウハウと有資格技術者を擁しており、信頼性の高いサービス提供が可能です。
財務状況と業績推移から見える実態
テスホールディングスの財務状況を見ると、成長への投資と収益性のバランスに課題が見えてきます。
2025年6月期の連結業績は、売上高約366.8億円、営業利益25.48億円でした。売上高は前年から約20%増加し過去最高を更新しましたが、営業利益は横ばいに留まっています。特に注目すべきは純利益の急落で、前期の11.85億円から2.04億円へと約83%も減少しました。
この純利益急減の主因は、長期為替予約に関するデリバティブ評価損約18.3億円と、英国子会社への投資損失約5.3億円です。ただし、これらは一時的な要因であり、2025年8月以降はヘッジ会計を適用したため、今後は期間損益への影響は無くなる見込みです。
セグメント別に見ると、収益構造の偏りが顕著です。売上高ではエンジニアリング事業約181.4億円、エネルギーサプライ事業約199.6億円とほぼ半々ですが、利益面ではエンジニアリング事業が3.6億円に対し、エネルギーサプライ事業が24.47億円と、全体の約9割を稼いでいます。これは、EPC案件で一部不採算プロジェクトがあったことと、発電・売電収入が安定高収益であることを示しています。
財務面では、レバレッジの高さが気になります。2025年6月期末の自己資本比率は28.1%、D/Eレシオは2.04倍となっており、有利子負債は約874億円に達しています。これは2024年に大型投資(バイオマス発電所建設や太陽光発電所取得)を積極的に行った結果です。
キャッシュフロー計算書を見ると、2025年6月期の営業キャッシュフローは78.06億円のプラスに回復しましたが、投資キャッシュフローは約▲91.6億円と依然として大きな資金流出が続いています。ただし、2024年6月期の▲154.9億円からは投資負担が減少しており、大型投資の山場は越えたと考えられます。
現預金残高は164.3億円と前期比+23.3億円増加しており、当面の資金繰りに大きな懸念はありません。しかし、今後も成長投資を続けるには、営業キャッシュフローの安定的な創出と、場合によっては資本増強も視野に入れる必要があるでしょう。
株価バリュエーションと投資判断
テスホールディングスの株価は、2021年4月の東証1部上場時の初値2,010円から長期的な下降トレンドにあり、2025年11月現在は360円前後で推移しています。時価総額は約252億円です。
株価が低迷している主な理由は、業績の不安定さと財務リスクへの懸念です。2023年度に営業利益率19.9%を達成した後、2024年度は7.7%、2025年度は6.95%と急低下し、純利益に至っては一時的要因で極端に減少しました。また、高いレバレッジと利益変動の大きさから、市場は同社の将来成長性に対して半信半疑の状態です。
しかし、バリュエーション指標を見ると割安感が際立ちます。PBR約0.59倍、PSR約0.7倍、予想PER約5.8倍という水準は、市場平均や同業他社を大きく下回っています。BPS(一株純資産)は603円に達しており、株価は純資産の6割程度に留まっています。
アナリストの目標株価は340円前後と、現在の株価水準とほぼ同値です。レーティングは「2(中立)」が続いており、短期業績の不透明さから様子見姿勢が示されています。ただし、弱気(売り)にも傾いていないことから、下値余地は限られるという見方もあります。
一方、2026年6月期の会社予想は売上高470億円(+28.1%)、営業利益36億円(+41.3%)、純利益12億円(+486%)と増収増益を見込んでいます。ただし、この純利益予想は市場コンセンサス(20億円強)を下回っており、慎重な前提が織り込まれています。
投資判断としては、現在の株価水準は悲観シナリオを織り込んでおり、中長期視点では魅力的なエントリーポイントと評価できます。蓄電池市場の拡大や大型プロジェクトの進捗次第で、株価のリレーティング(評価見直し)が期待できるでしょう。
中期経営計画TX2030の実現可能性
テスホールディングスは2024年8月に中期経営計画「TX2030(TESS Transformation 2030)」を発表しました。2030年6月期に売上高1,230億円(2024年6月期実績比約4倍)、営業利益134億円(同約6倍)という極めて野心的な成長目標を掲げています。
この計画の中核となるのが、蓄電池ビジネスとバイオマス燃料事業の拡大です。蓄電池EPCでは、2025年1月に東京センチュリー系から約90億円規模の受注を獲得し、2025年2月には大和エナジー・インフラとの提携により今後3年間で国内合計2GWhの系統用蓄電池案件の事業化を目指すと発表しました。
実際、2025年6月期末の連結受注残高は約380億円と前年の2倍以上に膨らんでおり、そのうち約7割が蓄電池関連EPCです。これは計画初年度として順調な滑り出しと言えます。
エネルギーサプライ事業でも、オンサイトPPA案件が増加し自家消費型太陽光の供給量が伸びています。佐賀伊万里バイオマス発電所は年間約74億円の売上寄与が見込まれており、ストック収益拡大の布石となっています。
ただし、計画実現へのハードルは高いと言わざるを得ません。2030年に売上1,230億円を達成するには年率20%以上の成長が必要であり、現在の受注ペースをさらに加速させなければなりません。また、高いレバレッジと利益創出力の弱さから、これ以上の大型投資には慎重さが求められます。
同社は2025~2027年を「成長投資の準備期間」、2028年以降を「成長拡大期間」と位置付けており、足場を固めながら設備投資の回収と利益成長サイクルへの転換を図る方針です。京都府で開発中の大規模再エネ+蓄電プロジェクトなど、キープロジェクトが無事収益化できるかが、計画達成のターニングポイントとなるでしょう。
楽観的に見れば、蓄電池市場の爆発的成長に伴い同社業績も飛躍的向上が期待できます。慎重に見れば、財務制約や実現までの時間を考慮し、段階的な成長にとどまる可能性もあります。いずれにせよ、進捗状況を注視しながら投資判断をアップデートしていく必要があります。
リスク要因と投資上の注意点
テスホールディングスへの投資を検討する際、いくつかの重要なリスク要因を理解しておく必要があります。
まず、政策依存度の高さです。再生可能エネルギー関連の補助金制度や固定価格買取制度(FIT)の見直し、電力制度改革の影響を強く受けます。政府の脱炭素政策が後退すれば、事業環境は一変する可能性があります。
次に、大型プロジェクトの進捗遅延リスクです。許認可取得や系統接続協議に時間を要し、計画通りの売上計上ができない案件が存在します。実際、京都府の大型案件は着実に進展しているものの、売上や利益の計上時期がまだ確定していないため、2026年6月期の業績予想には含まれていません。
資材価格・施工費高騰も無視できません。インフレや円安で機器価格や輸送費、人件費が上昇すると、EPC案件では見積コスト超過の恐れがあり、利益を圧迫します。海外からの蓄電池・パネル調達が多いため、為替変動リスクも相応にあります。
再生可能エネルギー特有のリスクとして、出力制御問題も顕在化しています。太陽光発電の大量導入により、九州等で発電抑制が頻発しており、同社保有の発電所でも売電収入が減少する可能性があります。
バイオマス燃料の調達リスクも重要です。インドネシア産PKS(ヤシ殻)等を扱う計画ですが、現地サプライヤーとの関係構築や在庫確保が円滑に進まないと、安定供給に支障が出る可能性があります。
財務面では、過剰債務による制約が最大の懸念です。金利上昇局面では利払い負担増や借換えコストが上昇します。仮に大型案件の先行費用が嵩んだり売電収入が想定を下回ると、キャッシュ不足に陥る可能性も否定できません。その際は増資や資産売却を余儀なくされ、株価希薄化や成長鈍化に繋がるでしょう。
経営面では、有資格技術者の不足が事業拡大のボトルネックになる可能性が指摘されています。急成長に人材採用・育成が追いつかないと、受注はあるのに捌けないという事態になり得ます。
これらのリスクは複合的に表面化する可能性があり、投資家としては適切なリスク管理が求められます。分散投資や損切りルールの設定、定期的な投資判断の見直しなど、慎重なアプローチが必要です。
競合他社との比較分析
テスホールディングスの競争力を理解するため、主要な競合他社と比較してみましょう。
ウエストホールディングス(1407)は、売上高約472億円、純利益約53億円と、規模・収益性ともにテスホールディングスを上回ります。太陽光発電のEPCと自社発電(PPA)を組み合わせたモデルで実績豊富ですが、事業領域が太陽光偏重で、FIT終了後は企業PPA頼みという側面があります。
イーレックス(9517)は、売上高約865億円と大規模ですが、純利益約16億円と利益率が低迷しています。木質バイオマス発電を主力とし、FIT固定価格契約により安定収入を確保していますが、燃料価格変動に利益が大きく左右される体質です。
レノバ(9519)は、売上高約702億円、営業利益約40億円で、太陽光・風力・バイオマス・地熱まで多様な再エネ電源を開発・運営しています。プロジェクトファイナンス組成力に優れ、大型案件を推進する開発力が強みですが、減価償却負担や持分法損失で純利益が伸び悩む傾向があります。
これらの競合と比較した際、テスホールディングスの優位性は「ワンストップソリューション提供力」「フロー&ストックのバランスモデル」「蓄電池ビジネスへの先行投資」などです。他社が発電所開発や運営、設備工事など特定領域に特化する中、テスホールディングスは開発・EPC・ファイナンス組成・運用管理まで一貫して遂行できる点が差別化ポイントとなっています。
一方、課題としては「財務基盤の弱さ」「規模の劣勢」「海外展開力の不足」等が挙げられます。資本力では大手に及ばず、信用力の面でも見劣りします。
ただし、日本の再エネ市場自体が拡大局面にあり、新規案件のパイが増えることで各社成長余地は大きく、テスホールディングスも差別化ポイントを活かせばシェア拡大のチャンスがあります。特に蓄電池分野では国内トップクラスの施工実績を誇っており、今後の市場拡大の恩恵を受けやすい立場にあると言えます。
まとめと投資判断
テスホールディングスは、再生可能エネルギーEPCから自社発電運営まで一貫対応できる独自のビジネスモデルを持つ企業です。蓄電池ビジネスへの先行投資と、フロー+ストック収益の組み合わせにより、脱炭素社会への移行という追い風を捉える体制を整えています。
財務面では高いレバレッジと利益変動の大きさが懸念材料ですが、2024年の大型投資が山場を越え、今後は投資負担が緩和し、営業キャッシュフローの改善が期待されます。一時的要因による純利益急減も、会計処理の変更により今後は解消される見込みです。
株価は長期的な下降トレンドにあり、PBR約0.6倍、予想PER約6倍と割安水準に放置されています。これは市場が短期業績の不透明さを懸念している結果ですが、裏を返せば、悲観シナリオが織り込まれており、中長期視点では魅力的なエントリーポイントとも言えます。
中期経営計画「TX2030」は極めて野心的な目標ですが、蓄電池市場の拡大や政府支援を考慮すれば、潜在的な達成余地はあります。受注残高の急増や大型提携の具体化など、計画初年度として一定の進捗が見られることは心強い材料です。
一方、政策変更リスク、大型プロジェクトの進捗遅延、資材価格高騰、財務制約など、無視できないリスク要因も多く存在します。投資判断にあたっては、これらのリスクを十分に理解し、適切なポートフォリオ管理を行うことが重要です。
総合的な投資判断として、テスホールディングス株は「リスクは高いものの、将来的なリターン期待は大きく、投資妙味がある」と評価します。蓄電池市場の爆発的成長に伴う業績拡大の可能性を考えれば、現在の低バリュエーションは将来の成長を正当に反映していないと考えられます。
購入推奨度は★4(強気)です。リスク許容度のある投資家にとっては、ポートフォリオの一部に組み入れることで、将来のアルファ(超過リターン)獲得を狙う戦略が有効でしょう。ただし、進捗状況を注視しながら、柔軟に投資判断をアップデートしていくことをお勧めします。
テスホールディングスは、将来有望だが注意深く見守る価値がある銘柄です。脱炭素社会への移行という大きなうねりの中で、同社がどのような成長を遂げるのか、今後の展開に注目していきたいと思います。

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